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親であり、師匠であり 永遠にたどり着けない目標。 憧れにも似た、大好きな“踊り子”

スタイリスト藤崎コウイチ氏インタビュー

18歳で金子國義と出逢い、晩年まで長きにわたり様々な活動をともにしたスタイリスト、藤崎コウイチ氏。金子國義の盟友でもあったデザイナー、コシノヒロコ氏との合同展である「EROS 2017」を主宰した藤崎氏のもとを訪ね、展示コンセプトや、今は遠い華のような時代を生きた金子國義の面影を追ってみた。

−金子國義氏との一番最初の作品製作は?—

スタイリスト志望だった僕が一番最初に彼と仕事をしたのは、パリで撮影した写真集でした。当時まだ18歳の少年だった僕は、先生の「わたしの世界が解るなら大丈夫よね?」と言う言葉に、自分にそんな大役がつとまるのだろうか、と不安な気持ちを抱きつつも、金子國義の作品に関われるんだ、という想いから、「やります。やらせてください。」という言葉が口をついて出ていたんですね。若いってすごいことですね(笑)

ですが、あんなに美意識が鋭く、見る目の厳しい人に半端なものは絶対に見せられません。準備から撮影本番まで、とにかく必死に取り組みました。
そんな日々の中、最も嬉しかったのは、師匠と僕の間で交わされる、「美」と「魅力」を感じるものに対する共通の部分が限りなく近く、そして好きな物もまるで約束でもしていたように、ほぼ一致していたこと。
「スカートのフォルムは巻き貝のようにキュッとタイトに」とか、「あの映画に出てくるドレスみたいに」とか、「ヴィヴィアン・リーのあのコルセットの雰囲気で」、「ディオールのリボンとドレープの感じ!」というように、「衣装はこんなふうにしたい」という、キーワードだけで理解し合える表現がうまくハマったんですね。先生いわく「出会うべくして出会ったぁ!」って。少し新派っぽい台詞回しで。(笑)
こうして、パリで金子國義によって撮影された写真集「みだらな扉/La Porte Devergondee」が僕のスタイリストデビュー作になりました。

初めて先生が作品を作る現場に参加して気づいたのは、ものづくりの上で必要なのは、「自分はこういうものが好きなんだ」「これが美しい」と素直に感じることの大切さ。このとき以降、この指針がブレさえしなければ、この先もきっと僕は大丈夫だ、と思えたんです。

思えば、先生とは40歳近くも年齢差があるのに、好きな映画や音楽、ファッションや絵画の話で意気投合して一晩中話し込んでしまうこともありました。
しかし不思議と会話の上で年齢差を感じた事は殆ど無かった。やはり優れたクリエーターの感性というものは、常にヴィヴィッドで、年齢を重ねても全く錆びないのだろうと感じます。

 

 −表現者・金子國義の存在とは−

僕が先生に一番憧れていた部分は、やはりその研ぎ澄まされた天性の「美意識」。
もともと彼は、画家になろうと決めて画家になったわけではないんですよね。
暮らしそのもの、日常そのものがアートだった。
高価かチープかは全く関係無く、彼なりの独自の目線で選んだ身のまわりのインテリアや小物、そういった日常を彩るアイテムが金子國義の絵画作品のパーツであり、確固たる世界観を作り上げていた。
その独特な審美眼と世界観こそが彼の作り上げた「美意識の核」であり、それが昇華されて唯一無二のスタイルを持つ芸術になっていったのだと思うんです。

また、アーティストとしての核になる部分としては、そういった独自の審美眼があったことと、その類まれなセンスと情報収集力があげられると思います。
「美意識」のアンテナを常に張り巡らせていて、洋の東西やジャンルを問わず、あらゆるところからヒントのようなものを持ってきて、どんどん吸収していく。
そういったことが彼の芸術活動のベースには常にあったと思います。

そして本人が持っている性格的な部分でいえば、”キュートさ、チャーミングさ、ユーモアのセンス”は本当に憧れる素敵な要素でした。これはもう、才能といってもいいくらい!
製作活動に関しては一切妥協なく、真摯そのものの表現者・金子國義だけれど、普段の彼は「ネコちゃん」という愛称で呼ばれ、誰からも愛される存在でした。

ほんとにね、もうどこでだって踊るんです。好きな曲がかかるとインタビュー中でも踊りだしちゃう。それがまた可愛いらしくて。
画家という顔はもちろん有名だけれど、ごく親しい関係の方に限って言えば、”踊り子” という表現が一番ピンとくる、という方も多いんじゃないかと思いますね(笑)。

次ページ:表現者としてのDNAを受け継ぐこと

 

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打矢 麻理子

SEIReN編集長

打矢麻理子

様々なジャンルの女性ファッション誌や、ビジュアルブック、書籍制作などの経験を活かし、編集者として活動中。2017年に出版社の編集事業局取締役社長を経て独立。クリエイターチーム「Lilith Edit」、メディアプロジェクト「SEIReN」を主宰。

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