What’s SEIReN project

親であり、師匠であり 永遠にたどり着けない目標。 憧れにも似た、大好きな“踊り子”

スタイリスト藤崎コウイチ氏インタビュー

18歳で金子國義と出逢い、晩年まで長きにわたり様々な活動をともにしたスタイリスト、藤崎コウイチ氏。金子國義の盟友でもあったデザイナー、コシノヒロコ氏との合同展である「EROS 2017」を主宰した藤崎氏のもとを訪ね、展示コンセプトや、今は遠い華のような時代を生きた金子國義の面影を追ってみた。

 

藤崎氏は取材場所である銀座のギャラリー空間に、まるでバレエダンサーのように音もなく入ってきた。中性的な物腰と人懐っこい笑顔と佇まいは、まるで故人・金子國義の醸し出していたであろう雰囲気そのものに思える。

 

案内された会場1階には、金子國義作品の中でもエロティシズムが際立つ油絵の作品とともに、春画をモチーフにしたというコシノヒロコ氏の絵が展示されている。エロスが芸術にまで高まりあう、その一瞬の邂逅を目のあたりにするような光景だ。

 

そして、2階へ足を踏み入れると、そこには生前金子國義氏が愛用していた家具やインテリアを配した、退廃的な香り漂う「エドワルダの部屋」がひろがる。

金子國義の代表作のひとつでもある、ジョルジュ・バタイユ著「マダムエドワルダ」の挿絵原画作品を主軸に、娼婦エドワルダの官能性を秘めた私物を思わせる小道具なども展示されており、たった今までこの部屋の女主人が佇んでいたかのような錯覚さえ生じさせる。

この会場のディスプレイをはじめ、全体のディレクションに至るまで、藤崎氏がすべてコーディネートし、「EROS 2017」と題したという。

 

Interview

—なぜ”EROS”をテーマにしようと思ったのか−

春画展に行った時の話で、コシノヒロコさんと会話が盛り上がったのがきっかけなんです。春画的な内容も、いやらしさとか下品さとか、そういった印象になってしまう中途半端なものではなくて、ある一点までクオリティが到達すると、それはもうアートになるんじゃないか、っていう。

春画展もそうですけれど、この展示にしても女性のお客様の割合が多いんです。
いわゆる「エロ」ではなく、崇高で美しく魅力的なものとして受け入れてくれているのを目の当たりにすると嬉しくなりますね。

ちなみに今回の展示では、金子作品のなかでも特にエロティックな要素の強い作品をセレクトしています。
美しさや崇高さ、モード性と洗練、そういう雰囲気が漂うものであれば、かなりエロティックで激しい表現をしても決して下品にはならないんです。
限りなく洗練された清濁表現の中で生まれる、エレガンスの香る部分が金子國義作品の特徴とも言えると思います。

 

 −金子國義さんとの出会いは−

九州から東京に出てきて、十代の多感な頃から、彼が亡くなるまで20年近く共に過ごしました。僕にとっての金子國義は師匠でもあり、まさに”東京のお父さん”ともいえる存在。
彼が撮影する写真作品などの衣装のスタイリングに関しては一任されておりましたし、個展に於ける作品の配置のバランスや独特なディスプレイの方法も学び、また様々な創作活動を行う姿も見てきました。

出逢ったきっかけは、以前からお付き合いのあったデザイナー・鳥居ユキさんからお誘いを受けファッションショーに出演した際に、なんと金子先生もモデルとしてキャスティングされていたこと。まさにモードが僕達を引き合わせてくれた、という感じでした。

子供の頃から僕は金子國義の大ファンで、彼の描いた少年の絵のポストカードをボロボロになっても持ち歩いていたくらい。
だからその日、「ずっと先生のファンでした」という言葉とともにそのポストカードを見せたら、「あら! ご挨拶で言っているのかと思ったら本当なの!?」と。
「明日からうちにいらっしゃい」という魔法のような言葉をかけられたその瞬間から、金子國義の”美意識”とともに生きる日々が始まりました。

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打矢 麻理子

SEIReN編集長

打矢麻理子

様々なジャンルの女性ファッション誌や、ビジュアルブック、書籍制作などの経験を活かし、編集者として活動中。2017年に出版社の編集事業局取締役社長を経て独立。クリエイターチーム「Lilith Edit」、メディアプロジェクト「SEIReN」を主宰。

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