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愛の不可能性−叶わぬ愛の物語

フランス前衛サーカスの鬼才、カミーユ・ボワテル来日!

出版業界の大先輩で、今は東京芸術劇場の舞台公演の企画などで活躍されている立石和浩さんから、
素敵なお知らせをいただきましたので、ワクワクを一足お先にご紹介しますね。

みなさんは、フランスのコンテンポラリー・サーカスの異端児として、日本でも熱い注目を浴びているパフォーマー、カミーユ・ボワテルをご存知でしょうか。

生来の放浪癖から、日本での公演を行う以前にも日本各地を彷徨していたというカミーユ・ボワテル。
この時生まれた奇想が実を結び、日本人アーティストのコラボレーションによる創作が実現したのだそうです。

この新作『間―MA』が上演されるのは来年2019年のフランスはモンペリエ・ダンスフェスティバル。そのフェスティバルでのワールドプレミアに先駆け、日本でのトライアウト(試演)が行われることになり、9月28日、29日、30日の3日間、この話題の前衛サーカスの鬼才、カミーユが『間 エチュード―MA étude』と名づけられた作品をひっさげて東京芸術劇場にやってきます。

早速、今回このトライアウト実現のために日々奔走されている立石さんに、カミーユ・ボワテルの人となり、エピソードを教えていただくべく、お話を伺ってみました。

 

−80年代、渋谷界隈のアートやステージパフォーマンスを数多くプロデュース、コーディネートしてきた立石さん。カルチャー雑誌や書籍の編集者を経て、様々な立ち位置から多くのアーティストを見てきていらっしゃると思うのですが、カミーユに対しては、どんな印象を抱かれましたか?

 

カミーユに感じたのは、“アタリはソフトだけど、天才肌のパフォーマーゆえ、内には過激な感性を秘めている男”だということ。

7月にフランスのランスで行われたリハーサルの立会いに赴いた際、カミーユにこんなことを言われました。

『自分はジャーナリストの仕事を難しくするのが仕事なんだ。そういう多形的なアーチスト(artiste polymor)で、常に言葉にできない何かを表現したいと思っているんだ』と。

 

そういう、こちらをドキっとさせるような返しをしてくる、というのが面白かったですね。
イマドキのメディアは、何でもわかりやすい方向、解説する方向に持っていこうとしますからね(笑)。
そういった意味ではウィットを感じるメディア批判にもなっていて、うまいことを言うな、と思いました。

そして僕自身はこの、カミーユのいう”多形的”という言葉から、フロイトの「多形倒錯」ということばを連想しました。
厳密にいえば意味合いは違うんですが、カミーユ≒多形倒錯的なアーティストって捉えてみると、なんだかそそられませんか?

 

多形倒錯的アーティスト! 素敵なキャッチフレーズですね!
多形倒錯って、本来は、フロイトの精神分析のなかに出てくる「幼児期に性的嗜好が一定しない状態」という意味合いかと思いますが、芸術家って、まさに幼い子どものままの感性を持つ人々ですよね。

社会的な制約にとらわれず、興味関心の赴くまま、縦横無尽に、心のままに表現をしている。

見るものは、見る角度によってそれぞれ違う受け取り方をしてもいいし、なにか自分の魂の中にある共通項を見出して、勝手にゾクゾクしてもいい(笑)。


-カミーユさんは、今回の舞台を「『間―MA』とは、叶わぬ愛の物語」と銘打ち、万華鏡のように展開する”不可能な愛のスペクタクル”と表現されていますが、実際、どんな舞台になるのでしょうか。

 

僕がみた7月のリハーサルの時点では、まだ一部しか見ることができなかったので、あくまで個人的予測ではありますが…。

今回セクシャルなところはどこまで表現されるかわかりませんが「愛の不可能性−”叶わぬ愛”」ということには執拗にこだわっているので、様々な崩壊する(男女の)愛のかたちが表現されるのではないか思います。

そのあたりはSEIReNの読者にも是非見てほしいと思っています。

 

なるほど。“愛の不可能性”、そして”叶わぬ愛”

そのことばにもまた、とても多形的な意味合いを感じました。

きっと、ここでいう”叶わぬ愛”とは、一方通行だから叶わない、倫理や宗教、慣習にそぐわないから叶わない、といった即物的な理由だけではないですよね。

生物間の間に介在する”愛”というものは、もともと実態のあるものではなく、感じたり共鳴しあうことで成立するもの。

生きている限り、常に揺蕩い、完成することのない抽象的・想念的であるものがゆえに、あらゆる愛は不可能である、ともいえる気がします。

そして、こんなふうに様々な受け取られ方をするのも、また多形的な芸術の面白いところですよね。

私も、カミーユさんの頭のなかにある”愛”がどういったかたちで多形的に表現されるのか、今からとっても楽しみです。

芸術の秋、深淵なる愛について想うのにも絶好の季節♡

公演日の9月28〜30日は、ちょうど池袋で東京芸術祭の開催期間中でもありますので、
みなさまもぜひ、東京芸術劇場に足をお運びになってみてはいかがでしょうか。

 



〈公演チケット
プレゼント情報〉

今回ご紹介したカミーユ・ボワテル日本公演
『間 エチュード―MA étude』
ペアチケットを抽選でプレゼントいたします。

ご希望の方は、下記の〈公演概要〉より、
3公演の中から希望日時をお選びいただき、
お名前・携帯番号(もしくはメールアドレス)を明記のうえ、
SEIReN編集部までメールにてご応募ください。

ご当選者の方へのメールの返信をもって当選発表とさせていただきます。

応募締め切り:2018年9月25日

応募メールお送り先アドレス:contact@lilith-edit.co.jp

 


〈カミーユのこれまでの日本での公演〉

◉2014年 東京芸術劇場のTACT/FESTIVAL 2014での初来日公演
『リメディア(L’immédiat)~いま、ここで』
触れるもの全てが壊れゆく冒頭シーンで日本の観客の度肝を抜く。

◉2015年 クレール・リュファン作『眠れない…-L’insomnante』出演(美術も担当)
不可思議な眠りの世界を表現。

◉2016年 『ヨブの話――善き人のいわれなき受難 L’homme de Hus』日本初上演
伝説のデビュー作(2003年初演)を日本で上演。
カミーユ・ボワテルの日本での評価が決定的に。

 

〜(リリースより抜粋)〜

この、カミーユが構想する新作のタイトルは『間―MA』。
カミーユの感性と身体性が、日本の芸術や行動様式の要となる概念「間」にどう絡むか――
そんな期待が高まるなかカミーユ自身の構想は広がり、2019年についにフランスのモンペリエ・ダンスフェスティバルでのプレミアが決定。
来年の初演に先がけ、『間―MA』の完成に向けた現在までの創作の成果を、日本の観客やプレスにプレゼンテーションしたいというカミーユのたっての希望で、トライアウト(試演)が実現しました。

「『間―MA』とは、叶わぬ愛の物語」と語るカミーユ。
スラップスティック・コメディ、ノスタルジックな幻燈劇、リアリズム演劇のような激しい愛の格闘等々、万華鏡のように展開する”不可能な愛のスペクタクル”。

クリエイティブ面でのパートナー、セヴ・ベルナールと共に短いエチュード形式で加速度的に演じられる場面の数々。
そこにカミーユがかねてから親交を深めてきた笙奏者の井原季子とクリエーターの青木淳という二人の日本人が絡み、「詩情による出会い」(カミーユ)が舞台上に現れます。

「何かが立ち現れ、私たちをクレイジーな冒険に誘う……
ほとんど不可能な、しかし実現されるであろう冒険に」――

 

「もし『間―MA』がひとつの建築物であるとしたら、『間 エチュード―MAétude』は、壁の内側を見せることになるでしょう。私たちは観客のみなさんに対して、今回初めて、特別に『間―MA』の仕組みを明かします。みなさんが見たこともない光のクリエーション、初めて演じられるフィジカルな場面の数々……みなさんはおよそ1時間、私の頭の中に存在することになります」

――カミーユ・ボワテル

 


公演概要



●上演作品
演目:『間 エチュード―MA étude』

構成・演出:カミーユ・ボワテル、セヴ・ベルナール
装置:カミーユ・ボワテル、青木淳
照明・音響プラン:ケンゾー・ベルナール
ステージ・マネージャー:ヒューゴ・フリソン

出演:カミーユ・ボワテル、セヴ・ベルナール、井原季子(笙・唄)、青木淳

●公演情報
日時:2018年9月28日(金)19:00開演 29日(土)15:00開演 30日(日)15:00開演
(全3公演)
会場:東京芸術劇場シアターイースト

●チケット情報
(全席自由・税込・整理番号付)
一般2,500円 65歳以上2,000円 25歳以下1,800円 高校生以下1,000円
※65歳以上、25歳以下、高校生以下チケットは枚数限定・要証明書
※障害をお持ちの方:割引料金にてご観劇いただけます。詳しくは劇場ボックスオフィスまで。
(要事前予約)
※公演内容等につきましては、変更が生じる場合がございますので、予め了承ください。

お問い合わせ・チケット取扱い
・東京芸術劇場ボックスオフィス 0570-010-296(休館日を除く10:00~19:00)
http://www.geigeki.jp/t/(PC) http://www.geigeki.jp/i/t/(携帯)

主催:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)/
東京都/アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
共同制作:リメディア
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
協力:アンスティチュ・フランセ東京

 

打矢 麻理子

SEIReN編集長

打矢麻理子

様々なジャンルの女性ファッション誌や、ビジュアルブック、書籍制作などの経験を活かし、編集者として活動中。2017年に出版社の編集事業局取締役社長を経て独立。クリエイターチーム「Lilith Edit」、メディアプロジェクト「SEIReN」を主宰。

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