精神と肉体、全方位的快楽ーM嬢が安全に夢や欲望を叶えるために
M女性のためのSM店『Lotus』インタビュー&レポート
今回は、連載「女王様の不条理な問題提起」でおなじみ、
SMライターの早川舞さんによる特別取材レポをお届けします。
今回取材していただいたのは、5月18日にOPENする
日本初のM女性向け会員制SM店『Lotus』です。
こちらはM女性向けに特化したコンセプトのお店。
オーナーの芙羽 忍(ふわ しのぶ)さんは、プロの緊縛師でもある女王様。
その経験値と知識を活かし、キャストにはプロフェッショナルなサディストに
なるための講習を行っているそう。
本物のサディスト教育とは、いったいどんなものなのでしょうか。
例えば、あなたが被虐趣味を持つM女性だったとします。
目の前の男性に罵られながらも同時に愛情を感じたい。
ただ抱きしめられるよりもさらに身動きの取れない、相手の嗜虐性を全身で味わうような緊縛をされてみたい。
目隠しをされ手足を拘束されて、丁寧に、ときに荒々しく愛撫されたい。
日常の中のいっとき、たとえ刹那的なものであっても、体だけでなく心の所有権まで明け渡してしまいたい。
そんなことを望んだとき、どこに行けば、そして何をすれば願望を叶えられるのでしょうか。
M男性であれば、お金を払ってSMクラブなり、M性感なりに行くことができます。
SMバーでもう少しカジュアルに楽しむ方法もあります。
しかし女性には、女性向け性感マッサージはあっても、SMに特化したものはありませんでした。
また、SNSやSMイベントを通じて知り合えたとしても、「M女性=無条件で服従する女性」と誤解するS男性は少なくありません。
単なるエロの対象として見られたり、人格を尊重してもらえないプレイを強いられそうになったりという「被害」の話は、SM業界に細々とながら10年以上生息している私(筆者。プロフィールは下記参照)もしばしば耳にします。
2018年5月18日にオープンする『Lotus』は、日本初のM女性向け会員制SM店です。
基本的なSMアイテムの使用技術や衛生管理、SMをする上で理解するべき身体の仕組み、女性の心理などの講習を受けたプロの男性サディストたちが在籍し、M女性たちの指名に応じてホテルに派遣されます。
この話を聞いたとき、私はわくわくしました!
私自身は、SMは、つまるところ好きな人同士で納得できることをすればいいという意見の持ち主です。
そのための選択肢が、これまで比較的立場が弱かった人たちの側に増えたことがすばらしい。
今まではM女性は、心身ともに被害者となるかもしれない危険を受け入れざるを得ない立場であることが多かった。
危険を好む人はそれでいいですが、そうではない人が選べる「何か」が少なかったのです。
パワーのある価値観が新しく増えたことで、これはもう日本SM史のターニングポイントになるとさえ思いました。
私は今、時代が変化する瞬間に立ち合っている……!
そこで『Lotus』のオーナーにインタビューを申し込みました。
オーナーは10年のキャリアを持つ女王様の芙羽 忍(ふわ しのぶ)さん。
プロの緊縛師でもあり、一般の愛好者に向けた緊縛講習会のほか、女性だけに向けた『女子縄会』を開催しています。
『Lotus』は、『女子縄会』参加者のある一言が直接のきっかけになって誕生したといいます。
(以下・「」内 芙羽さんコメント)
「女子縄会にはMの女の子もたくさん来ます。
彼女たちの心の穴を女性の私が埋めてあげられる部分もあるけれど、逆に男性にしか埋められないものもあると感じていました。
あるとき、Mの子のひとりが『汚いおじさんにいじめられたい』と話していたんです。
その場にいたほかの子も同意していて、これがまさに私が埋められない部分だと思いました。
同時に、『彼女の願いは、このままでは絶対に叶わないだろう』とも感じました。
彼女が求めているものは、女性の中で概念化された『汚いおじさん』なんです。
この言葉を経験の少ない男性が間に受けて本当に『汚いおじさん』になるのとは、まったく違います。
こういった男女の感じ方や、概念の異なる部分を女性向けSM店という形で解消できたら需要があるのではないかと、翌日オープンを決めました!」
『Lotus』では、M女性の心に「今、空いている穴」を埋めることを大事にしたいそうです。
「キャスト(所属するプロの男性サディスト)とM女性が結果的に長くお付き合いしてくれたらもちろん嬉しいですが、いきなりそこを目標にはしていません。
初対面や数回しか会っていない状態で、『これからずっと面倒見てやる、面倒見てほしい』なんてことを目指すのは、SMに限らずおかしなことですよね。
ですからキャストには『M女性の今ある欲求を満たす』プレイをしてもらいます。
『女子縄会』の参加者を始めとするM女性たちの意見を聞いたら、こうなりました。
M女性にゆくゆく本当のご主人様がどこかで見つかればそれに越したことはないし、ご主人様とお別れしたけど寂しくて……というM女性も歓迎です。
欲求を叶えることは、いえ、そもそも聞き出すこと自体、簡単ではありません。
概念と実際のすり合わせが難しいこともあるし、M女性本人が自分の欲求は何か、ということを自覚していないことだってあります。
心の穴を埋めようと双方がコミュニケーションを重ねた結果、思ってもみなかったところに着地することもあるでしょう。
でも、それがSMの面白いところだと思います。
こういった店の方針を貫くためのキャストの教育は万全にしていますが、それでも不安を感じる方や、まずはお話だけして、その中で自分が本当は何が好きなのか探りたいと考える方もいらっしゃるかもしれません。
そういった女性のためのカウンセリングコースもあります」
↑元・女王様であり、緊縛師として活動するオーナーの芙羽 忍さん。
さっきから頻繁に出てくる講習や教育という言葉。
具体的にはいったいどんなことをしているのでしょう?
「私が女王様時代に身につけた技術や衛生など、安全にSMを進めるための知識を、実際にM女性モデルさんにも協力してもらって、私自身が教えています。
これらはプロとして活動するために最低限必要なことです。
ですが、もう一本大事な軸があるんです。
それは『エスコート力』。
S男性がよく勘違いすることなんですが、多くのM女性はべつに性技を求めていないんですよ。
それよりも相手の話をちゃんと聞いて、心を開いてもらい、不安や恐怖を取り除けるかのほうがよほど大事で、エスコート力はそのための基本的なスキル。
極端な話、この力があればSMはできなくてもいいんじゃないかというぐらい(笑)重要です。
キャストにはエスコート力を磨いてもらうために、プレイをどうやって進めていくかはもちろん、話し方、ホテルに入ったときの座り方、SNSでの情報発信の仕方など、かなり細かく指導します。
私だけの独断ではなく、モニターのM女性の意見も参考にしています。
その内容は、女性であれば『そんなところまでいちいち教えるの?』というぐらい当たり前のことだと思いますが、男性にとってもそうだとは限りません。
『Lotus』のキャストは厳しい面接を経て採用した男性ばかりですが、それでも知らなかったことがたくさんあるとみんな驚いています。
今日はこれからキャストたちの講習があるんですが、まさにエスコート力を磨くための授業です。見てみますか?」
え、いいんですか。
ということで、見学させていただきました。
ちなみに、これは何度かに分けて行う講習のうちの一回とのこと。
詳しい内容は出せませんので、私の印象を中心にお話しします。
講習場所は新宿の『S3 studio』。
吊り代や檻の設備がある、SMマニア御用達のスタジオです。
M女性にも参加してもらい、講習が始まりました。
車座になって芙羽さんの話を真剣に聞くキャストたち。
ときどき質問も飛び出します。
講習内容は一度で覚えきれる内容ではないので、キャストはみんなノートをとっていました。
それにしても、講習の内容が本当に細かい!
女性の私でさえ、「そこまで気を使うのか」とびっくりしました。
でも、相手はおっかなびっくりお店を予約したM女性。
男性、それもSだという男性とホテルで二人きりになるのですから、キャストにとってはマイナスからのスタートなのです。
それを「まずは何とか信用してもらう」ためには、すべて必要なことだと芙羽さんはいいます。
とくに印象的だったのは、講習ではプレイ自体についてはあまり触れていなかったこと。
プレイ前後にどう振る舞い、プレイのために何を準備したらいいかの説明がほとんどでした。
それが「エスコート力」なんですね。
M女性モデルに協力してもらい、座り方の確認や、座る位置によって女性が相手にどんな印象を持つかを解説します。
実際にロールプレイをすると理解が深まります。
この日の講習は1時間半程度で終わり、残りの時間でサイト掲載用の撮影を行いました。
キャストのまるさん。
作務衣が似合う堂々とした風格の男性です。
緊縛が得意。
モニターのM女性との練習プレイを通し、「こちらが話をちゃんと聞こうとすることで、相手も話してくれる。
丁寧に聞き出していくことが大事だとわかりました」といいます。
キャストの七斗(ななと)さん。
プライベートでのSM経験もあり。
SMが好きで、さらに追求するためにプロになろうと思ったそう。
「勇気を出してお店に来てくれたM女性にしっかり寄り添っていきたいです」。
キャストの薫(くゆる)さん。
これまでプライベートでもSMの経験はあったものの、講習を受けて、プロとして何を身につけるべきか明確になったそうです。
「ここでの『話を聞く』は、普通の場面でのそれとはかなり違います。
まずはきちんと会話のできるキャストを目指します」。
キャスト講習と撮影の後は芙羽さんの緊縛講習会がありました。
キャストも残って緊縛の勉強をしていました。
キャストのはすみさん。
芙羽さんが打ち出す「男性が力を誇示するのではないSM」に惹かれて応募。
これからSMを始める人や手探りでプレイをしている人に、過激なだけではないSMを示せたらいいと考えています。
はすみさんと緊縛モデル女性との一コマ。
緊縛が続いて喉が渇いている女性に水を飲ませてあげています。
緊縛されるとまったく身動きがとれなくなるので、「相手が今、何を感じているのか」を常に考え、先回りして行動する必要があります。
緊縛だけでなく、どんなプレイにも通じることです。
緊縛講習を受けながら意見を言い合う七斗さんと薫さん。
ふとした会話からお互いのSM観を知り、それが刺激になることもあります。
『Lotus』の誕生で、SMの見方、考え方の幅はさらに広く、多彩になっていくと思います。
今後の展開がとても楽しみです。
『Lotus』には通常プレイやカウンセリングほかにも、M女性の申し込み限定で、男女ペアで受けられる「レクチャーコース」もあります。
コースの細かい内容や会員登録についてはリンク先からお問い合わせください。
−今回の取材先LINKはこちら−
Lotus
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芙羽 忍 OFFICIAL WEB SITE
http://fuwashinobu.sakura.ne.jp/fuwa.html
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