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キャンバスに生きる艶然たる女神たち

―昭和お色気イラストレーター・吉岡里奈氏を取材―Part1

《エロチカ・バンブーさん×都築響一さんトークショー記事》でも、
ちょこっとだけお名前の出てきたイラストレーター・吉岡里奈さん。
色っぽくて昭和レトロ、なのにどこかしらポップなお色気イラストの数々……。

近年カルチャー界でも熱い注目を浴びている彼女の絵と、
キュートな彼女自身の魅力を探っていきたいと思います。

淑女のみなさま、こんにちは。

今回の記事は、今私がいちばん気になるイラストレーター・吉岡里奈さんについて書かせていただこうと思います。

私が一番最初に彼女の絵に出逢ったのは、半年ほど前。

以前勤めていた出版社の元上司が、シニア向け(元気なおじいちゃん向けです☆)雜誌&WEBサイトを立ち上げた際、『このイラスト、すごくイイだろう!サイトのメインイラストに起用しようと思ってるんだ』と言って、1冊のZINEを見せてくれたのです。

昭和カルチャー好きな私としては、一瞬でその官能的かつレトロ昭和な世界観に惹き込まれ、夢中でそのZINEのページをめくっていました。

 

なんなんだ、この2000年代に描かれたとは思えない時代感!

なんなんだ、このオヂサンたちの鼻の下の伸びっぷりと絶妙なゲスい表情は!

 

昔、といってもよく考えたら二十数年も前なのですが、池袋の風俗街の玄関口、北口の線路沿いポルノ映画の宣伝看板がドーンと出ていた時代があります。

当時高校生だった私は謎にそれを眺めるのが大好きだったため、何かにつけてその線路沿いを休憩所にしていました。

看板に描かれていた映画宣伝ビジュアルは、おそらく90年代当時のリアルタイムのものではなく、日活ロマンポルノのリバイバル上映の宣伝だったり、昭和40年代頃のアダルト作品のものだったと思います。

平成も終わりかけているこの2010年代に描かれているにも関わらず、彼女の描く絵は、まさにその、昭和の時代の空気感なのです。

そんな気になるイラストの数々を日夜生み出している吉岡さんに、いろいろとお話を伺ってみました。

 

―キャンバスの中のエロスの女神はどうやって生まれたのか―

 

吉岡さんの作品の多くが“昭和お色気”をテーマに描かれていらっしゃいますが、なぜ“お色気・エロス”といったものをご自身のテーマにされたのでしょう?

 

「自分の女性性をありのままに、ポジティブに表現している人が好きなんです。
女性の体は誰でもありのままで美しいもの。

だから、男の理想に合わせたり媚びたりすることない女性を描きたかったし、自分のスタイルをもって、堂々と『私の裸どうよ?』っていうような強いメンタリティを表現したかったんです。

最近は昔ほど見かけなくなりましたが、街のあちこちにピンクチラシ(風俗の宣伝物)ってありましたよね。そこに描かれた、もしくは被写体となった女性たちって、笑ってはいるんだけれど、ものすごく無機質で、凍りつくようなつくり笑顔に見えたんです。

風俗に携わる女性たちもそれぞれ違う人間なのに、みんながみんな同じ仮面を被っているような怖さ……わかります?

商業的なエロスって、ほとんどが男性を主体としていて、女がモノのように扱われることが本当に多い女性から見たら、それはもう“女性ではない別の生き物”という感じですよね。

前回の個展は、まさにそんな“ピンクチラシの女性”をテーマにしました。

女性がモノとして、商品として描かれるのではなく、おこがましい表現ではあるけれど、私の手で女神に昇華してあげたい、という気持ちがどこかにあるのだと思います。

また、なぜ女性・エロスをテーマにしているのか、という部分でいえば、〈女性の自立〉をテーマにフェミニズムの旗手として活動されている上野千鶴子さんが発信するジェンダー論的なものにもともと共感を抱いていた、ということもあります。

そういったフェミニズムを、私なりの表現としていきたい気持ちもありました。

〈誰にも媚びず、自立した女性〉、キャンバスの上にそんな理想の女性を描きたい、と思ったときに、エロスを題材として描くことが多くなっていたのかな、と思います」

 

―オジサンたちのいやらしい眼差しが女神を生む!?―

 

なるほど。確かにエロスって、いちばん奥深い人間性が現れますよね。
作品の軸はあくまで女性、と感じましたが、その女性を眺めるオジサンの至福の表情というのもまた、吉岡さんの絵の素敵な持ち味ですよね。

 

オジサンも被写体としてはすごく興味深いですね。
男性って、とてもピュアで可愛らしい生き物だと思っています。
あ、別に個人的には“枯れ専・オジサン好き”ではないですよ〜(笑)。

私の絵の中に登場するオジサンたちは、あくまでも主役である女性の美しさやカッコよさを引き立てる名脇役

エロスという美神をあがめている信者の顔に見えたらいいな、と思います。

女性が媚びているように見える笑顔も、実はわざと〈媚びてあげている〉雰囲気なのもポイントです。

実は私、人の嫌なところ、見られたくないだろうな、っていう場面や表情を観察するのが大好きなんですよ。

例えば、街を歩いていて女性のスカートが風でふわっと捲れそうなとき、駅の階段を昇るオジサンの目の前をミニスカートの女性が上がっていくとき……

そんなときのオジサンの一瞬の表情は見逃せないですよね。

学生時代も、ブルマを履いている女子生徒を体育教師はどうせエロい目で見ているに違いない!と思ってその教師の表情をじっと見つめる……という。
絶対にイヤな生徒だったと思います(笑)。

私としては、そういう一瞬の表情をしっかりと脳内に留めおきたい、という思いで常にいっぱいなんです」

うわー!センセイ的には堪らないですね(笑)!
でも、若い頃の女性の“処女性”ってそういうものかもしれません。
ただ、それを今でも保ち続けて作品に投影しているところが凄いです!

「オジサンがいやらしく、それでいて喜ばしいようなゲスな表情で女性を眺めている構図によって、余計に女性が凛として見える、美しく女神のように見える、というのが理想なんです。

描いている時は、私の中にもいやらしい“オジサン”がいるのかもしれません。

そういったもの全てをひっくるめて、描いている自分すらも“俯瞰で見ている”っていう状況も面白いし、そういったワンシーンをこれからも切り取って描きたいな、という気持ちがありますね」

 

―Part.2に続く―

ーPart.3を読むー

 


【PROFILE】


吉岡 里奈(よしおか りな)/イラストレーター
1977年・神奈川県生まれ、川崎市在住。
昭和レトロなムードのお色気イラストをテーマに鋭意制作中。
多摩美術大学二部(現・芸術学部)芸術学科 映像コース卒業。
イラストレーション青山塾 ドローイング科11期〜15期修了。
2016年よりTIS会員。

【ホームページ】
rina-yoshioka.jimdo.com

【SNS情報】

〈twitter〉 
@yoshiokarinana

〈Instagram〉
yoshiokarina_33

〈tumblr〉
yoshiokarina.tumblr.com

 


―告知ー

現在、吉原の遊郭専門書店カストリ書房にて、
《吉岡里奈・原画店頭販売》を開催中!
ぜひお立ち寄りくださいませ。

カストリ書房
東京都台東区千束4-39-3

営業時間:11〜18時
定休日:月(祝日は営業、臨時休業あり)
店舗ホームページhttp://kastoribookstore.blogspot.jp

★また、3/17-21は、カストリ書房・京都店にて〈ピンクチラシとお色気雜誌〉をテーマに吉岡里奈さんの個展が開催されます。

打矢 麻理子

SEIReN編集長

打矢麻理子

様々なジャンルの女性ファッション誌や、ビジュアルブック、書籍制作などの経験を活かし、編集者として活動中。2017年に出版社の編集事業局取締役社長を経て独立。クリエイターチーム「Lilith Edit」、メディアプロジェクト「SEIReN」を主宰。

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