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知れば知るほど奥が深い“呼び名”のおハナシ♡

古典芸能のミカタ(第三回)ー古典芸能と女性のアソコの話ー

大和撫子たるもの、日本文化・芸能を知らずしてどういたしましょう。
と、いうことで、カルチャー連載の名にふさわしい^ ^連載がスタート♪
案内役は、出版界きってのカルチャー男子でもある中井仲蔵パイセン。
歌舞伎・浄瑠璃・能・狂言・現代劇の舞台はもちろん、最新の公開映画から宝塚歌劇
まで、あらゆる舞台演劇エンターテイメントに精通している仲蔵さんだからこそ、
難解なイメージの古典芸能もライトな切り口でわかりやすくナビゲートしてくれるはず。
第三回目のテーマは、いつもよりちょっぴりエロティックな話題、
「古典芸能と女性のアソコの話」についてです。

普段から打矢編集長からは、
「ここのサイトではもっと官能的な原稿を書くように」
とご指導いただいているのですが、どうにもこうにも根が真面目なもので、うっかりしているとつい「女性の社会進出」などといった硬派なネタを書いてしまいます。

それではイカンと、今回は心を改め、歯を食いしばってグッと卑近な話を書くことにしました。

 

ということで、第三回目のテーマは「アソコ」

アソコと言っても、九州は熊本の阿蘇にある湖のこと……

なんてカマトトぶったことを申し上げるつもりはありません。
ズバリ女性器のことです。

ということで、古典芸能の世界では女性の股に挟まったアレのことを何と読んでいるのか、これまでのぼくの研究を発表し、皆様のご機嫌を伺おうかと思います。

 

さて、どこの業界でも、「符牒」なり「隠語」なり、その社会の間でのみ通じる用語があります。有名なところでは、お寿司屋さんの「アガリ」や「オアイソ」。
あれはもともとは、寿司職人同士が客に分からぬよう話していたのが、いつの間にかカウンターのこちら側にも普及してしまった例でしょう。

古典芸能に携わる人たちでも、内部でしかわからない言葉はありました。

いちばん敏感になるのが、やっぱりお金の話

たとえば落語家の場合、どこかのお座敷に呼ばれることはよくありますが、そのことを後で「おう、こないだのアレ、いくらだった?」と尋ねられて、「○万円でした」と人前で金額を口にするのははばかられることがあります。

そういう場合は、周囲に知れぬように「カタコでした」とか「あの旦那、しみったれでヘイでしたよ」などと答えるわけです。

 

ちなみにこの数え方は、
1→ヘイ、2→ビキ、3→ヤマ、4→ササキ、5→カタコ、
6→サナダ、7→タヌマ、8→ヤワタ、9→キワ……
だそうです。

 

使いこなせばちょっとカッコイイ気もしますが、知り合いの落語家さんに聞いたところ、「我々も電車の中など他人の目があるところで使うことはまれにあるけど、“今日の飲み会は一人ヤマずつでーす”なんて素人さんが言うのは、こっちまで気恥ずかしくなるので勘弁してほしい」とのことでした。

 

この用語は、今でも寄席界隈では辛うじて使用されていますが、文楽(人形浄瑠璃)の社会では、ほとんど絶滅状態だとか。

現在60歳ちょいすぎくらいの技芸員さんに訪ねたところ、「大正~昭和の時代に活躍した自分の師匠は、ササキだのサナダだの言ってたけど、ぼくらの世代はもう使わなかった」そうです。

察するに、1963(昭和38)年に、文部省(当時)、大阪府、大阪市、NHKなどの後援を受けた「財団法人文楽協会」ができてからは、文楽の芸人さんたちは準公務員とでも呼ぶべき「技芸員」になってしまったので、小遣い稼ぎで個人的営業活動を行う機会が減ってしまったのでしょう。

 

ここからが本題。

そんな落語界、文楽界の人々に、こっそり「女性のアソコを何と呼ぶか」を聞いてみたところ、いずれも答えは同じ。

「タレ」というそうです(ちなみに男のは「ロセン」)。

「タレ」は女性器のみならず、広く女性一般や、あるいは性行為のことを指すそうで、女義太夫のことをちょっと揶揄して言う際は「タレギ」と呼んだり、また女性と情を交わすことを「タレをカく」というそうです。

この「タレ」「タレをカく」という用語は上方の演芸場のほうがより使用頻度は高いようで、吉本の漫才師などが深夜番組で言うのを聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

さらに、歌舞伎の幹部俳優役のかたに話す機会があった際、やっぱり符牒について聞いてみたのですが、「ヘイ、ビキ、ヤマ」などは「わからない」とのことでした。

やはり幹部級になると、金額のような下世話な話題には触れないのかも。

 

 

ただし、「タレ」「ロセン」というのは理解していたので、落語も文楽も漫才師も歌舞伎役者も、ルーツをたどれば一緒だという気がします。

 

ちなみにテレビ局の場合は、成り立ちがちょっと違うようです。

テレビの世界はジャズ界から参入して来た人が多いので、隠語もその系統のものが多いのです。 具体的に言えば、上下をひっくり返す言い方

「ザギンでナオンとシースーウークー」ってやつですね。

女性器も、タレではなく「コーマン」

思えばビートたけしは浅草の演芸場出身だったのに、ラジオでは「コーマン」を連発してました。

当時の彼が飛び抜けて異質だったのは、そんなところにあったのかもしれません。

 

念のために、能楽者の人にも、アソコの呼び方について聞いてみました。

落語や歌舞伎などと違い、能楽者は江戸時代は武士の身分だったので、話す言葉も高尚だったに違いない、と思って、「先生は、女性のアソコのことは何と呼びますか」と聞いてみたのですが……。

「そりゃキミ、××××に決まってるじゃないか」
と、シンプルな4文字の言葉が返って来ました。

 

以上、ご参考になりましたでしょうか。

今回のウンチクをご披露なさる際は、くれぐれもTPOにお気をつけくださいね。

中井 仲蔵

編集者/コラムニスト

中井仲蔵

中井仲蔵 (なかいなかぞう) 昭和43年生まれ。普段は都内の中堅出版社で働くが、たまにコラムニストとして映画や演劇について語ることも。独身。長男。花粉症。

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