失われゆくグランド・キャバレーの世界
―都筑響一氏×エロチカ・バンブーさんトークショーレポ―Part.2
ジャーナリスト・都築響一さんが、世界的バーレスク・ダンサーのエロチカ・バンブーさんを招いてトークショーを開催。失われつつある昭和のグランド:キャバレー文化のお話を伺ってきました(^^)
トークショーの会場は、渋谷にある「Dining café theater」。
「キャバレー夜話 伝説のニッポンバーレスク」と題されたイベント会場には
すでにディープな雰囲気を醸し出している濃ゆ〜い面々がちらほら。
―エロチカ・バンブー姐さん会場に現る―
カウンターにはすでに華やかなブラックドレスに身を包んだエロチカ姐さんが!
私はそのときエロチカさんとは全くの初対面だったのですが、もうそこだけ“That’sキャバレー”感漂う迫力!
このイベントを教えてくれたイラストレーターの吉岡さん(※1)にご紹介される間もなく、即座にご本人とわかったのは言うまでもありません。
※1 そうそう、この吉岡さん、昭和お色気をテーマに絵を描いていらっしゃるのですが、その世界観がまた、ほんとに凄いのです!この魅惑のイラストレーターさんに関してはまた追って、ご紹介致しますね。
お酒を飲みつつ、みなさんと会話を楽しんでいらっしゃるエロチカさんの横にはあの巨匠・都築響一氏のお姿も。都築さんといえば、写真家・編集者・ジャーナリストという3つの顔を持つ男!
『POPEYE』創刊当時から今日まで、長きに渡ってマルチなご活躍をされているとっても有名な方なのです。
正直、ご挨拶をするのも恐れ多くて!と思っていましたが、実際にお逢いしたら、とっても穏やかで素敵な紳士! 一気にファンになってしまいました(単純(笑)!)
そしていよいよトークショーがスタート。
明るくおきゃん(※2)なエロチカ姐さんの軽妙なトークをうまく引き出しつつ、時代背景や奥深いネタを差し込みつつ会話を回していく都築氏。
※2 おきゃん。辞書によれば『活発な女性を表す言葉。また、粋なさま。漢字にすると〈御侠〉』。絶対死語かと思うけれど、後世に残したいかわいい昭和ことば。
―踊り子デビュー、衝撃のいきさつ―
ココでは書ききれないほど魅力的なエピソードがたくさんあったのですが、興味深かったエピソードをいくつか挙げてみますね。
今でこそ世界的バーレスク・ダンサーとして活躍されているエロチカさんですが、元々は、踊り子としてデビューしたわけではなかったんだとか。
人と話すことも苦手で引込み思案だった少女は、アーティストを志望して美大に進学。
そこで油絵を学んでいたものの、ある時「絵を描くだけじゃアートじゃない!」と思いたち、裸に白塗りでアートなパフォーマンスをする、某劇団に入団。
合宿をすると連れて行かれ、トラックの荷台で送られた先は奥深い山の中。
そこでの日々は、眉毛ソリから始まり、全裸、白塗り、金粉……etc.
それはそれはアバンギャルドな毎日が待っていたそう。
ところが、劇団員が山の中でパフォーマンスをしているだけでは、舞台も上演できないし、食べてもいけない。
そんな理由もあって、劇団の女性たちは当時隆盛を極めていたキャバレーに出稼ぎに行くことになったというのです。
今から思えば信じられない世界ですよね。
ですが、そこでキャバレー・ショーに出演し、その華やかな世界に魅了されたことからエロチカさんの長きに渡る踊り子人生が始まったのだとか。
イベント会場では、ショーの出演前に楽屋で撮影したというエロチカ姐さんのセルフィー(元祖セルフィーGIRLですね!)もスライドに映し出されたのですが、その華やかな姿と彼女の楽しそうな笑顔から、当時のキャバレーの盛況と活気が伝わってくるようでした。
―伝説のキャバレー〈ベラミ〉のこと―
また、活況を呈していた時代のキャバレー写真といえば、都築さんが当時のお話とともにものすごく貴重な写真の数々をご紹介くださいました。
会場にてご本人の許可を得て、この記事内でもいくつか掲載させていただきましたが、これらの作品は、都築さんの元に寄せられた老舗キャバレー「ベラミ」の踊り子さんたちの写真です。
⇡写真提供/都築響一氏 電子写真集「おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち 」より
〈ベラミ〉は、かつて北九州で活況を呈していたグランド・キャバレー。
キャバレー絶頂期である1959年に惜しまれつつ閉店したものの、そこの従業員寮から踊り子さんたちの私物に混ざって大量のプロマイドや舞台写真が出てきたのだそう。
都築氏は、1400枚にものぼるこれらの写真を編纂し、その魅力を余すところなく取り込んで電子写真集化したのです。
こちらの写真集、私も購入しましたが、まさに圧巻!
⇡写真提供/都築響一氏 電子写真集「おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち 」より
昭和の夜を鮮やかに彩った踊り子さんたちのなんともいえない表情……。
彼女たちの醸し出す空気感は、妖艶なのに底抜けに明るく、ポージングも美しく身体をくねらせていたかと思ったら、とんでもなくアクロバティックな体勢で謎の微笑みを見せていたり。
昭和カルチャー好きには堪らない貴重な写真の数々に、会場も大盛り上がりでした。
そんなお話をしている間にも時間は過ぎ、活況のうちにトークイベントは終了。
帰途、会場から地上へと続く細い階段をのぼると、そこには冬の冷たい空気を纏った2017年末の街の風景がひろがっていて……。
懐かしい時代の熱いトークに惹き込まれていたあの数時間、まるでタイムスリップしたかのように素敵な異空間にいたのだな、ということに気付かされた夜でした。
※こちらの記事でご紹介した写真が収録された写真集は、
都築氏が発行されているメールマガジン『ROADSIDERS’s weekly』の
SHOPページから購入できます。
⇡電子写真集(USB版)は、こんなキュートなパッケージに。
写真はイベント会場にて購入したもの。
都築響一氏・編
電子写真集『おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち』
⇓写真集のご購入やお問合わせに関しては、こちらを御覧ください⇓
http://www.roadsiders.com/shop/