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徒花と思われても、人生を謳歌する

月と影 Vol.2 林芙美子「放浪記」

月と影。
覗いて見たくなってしまう、少し怪しげな世界。
女の命とも言われる「髪」と、文学の邂逅。
そこには、美しく艶やかな秘密の物語が生まれるのではないでしょうか。

毎回日本各地の美容師に文学をテーマとしたヘアスタイルを作っていただき、フリーランス編集者の遠藤真耶が、少しだけ髪と文学の世界をナビゲートします。

林芙美子。なんと力強い女性か。人生を放浪し、女を放浪し、鮮やかに生きて見せた。過酷な人生に見えるかもしれないが、その波乱万丈の日々は、読む者に奔放に生きる姿への憧れをも抱かせる。

広島県尾道で10 代を過ごし、晩年も度々尾道を訪れたという芙美子。今回は、そんな芙美子と縁の深い広島で美容室を経営しているanfang Daigo さんに放浪記の一部を題材に作品を作っていただいた。

 

水の流れのような、薄いショールを、街を歩く娘さん達がしている。一 つあんなのを欲しいものだ。洋品店の四月の窓飾りは、金と銀と桜の花 で目がくらむなり。

 

空に拡がった桜の枝に
うっすらと血の色が染まると
ほら枝の先から花色の糸がさがって
情熱のくじびき

 

食えなくてボードビルへ飛び込んで
裸で踊った踊り子があったとしても
それは桜の罪ではない。

 

ひとすじの情
ふたすじの義理
ランマンと咲いた青空の桜に
生きとし生ける
あらゆる女の
裸の唇を
するすると奇妙な糸がたぐって行きます。

 

貧しい娘さん達は
夜になると
果物のように唇を
大空へ投げるのですってさ

 

青空を色どる桃色桜は
こうしたカレンな女の
仕方のないくちづけなのですよ
そっぽをむいた唇の跡なのですよ。

 

All photos and hair:Daigo

 

Daigo

 

2012 年 広島県福山市にAnfang 設立
サロンワークを中心に業界誌、セミナーなどで活躍
2010、2011 年 Japan Hairdressing Awards Area Stylist of The
Year 2年連続受賞
2014 年、2016 年 Japan Hairdressing Awards ノミネート
その他 コンテスト受賞歴多数

 

— 放浪記を読んでみて、どのような感想を持ちましたか?

僕は、尾道産まれなのですが恥ずかしながら今回のご依頼を頂くまで、きちんと本を読んだことがありませんでした。
「私は宿命的に放浪者である」冒頭この文で始まる作者の林芙美子さんの自伝的小説ということですが、文章からは生き様とは違う林芙美子さんの繊細さが伺えました。

 

—どのような女性像をイメージしましたか?

作者である林芙美子さんは、とにかく強い女性だと感じました。
「明日をどう生きていくか?」を考えるほどの極貧生活。加えて職も転々とし選ぶ男性も最悪。孤独と絶望の中にいながら、それでも必死にもがき苦しみながら生きていこうという姿に、とても凛とした女性だったんだと感じました。それと同時に、戦後を生き抜いてきた女性のパワーのようなものも感じました。

 

—撮影してみていかがでしたか?

マヤさんから頂いた放浪記の中の一節の情景を作品に落としこみました。
孤独と絶望の狭間の中、「生きる!」と叫ぶようなパワーと内面的な美しさを感じて頂ければと思います。

 

—お店に来店するお客様はどのような方が多いですか?

お客様は、変わりたい!綺麗でいたい!と願っている意識の高い方が多いです。
20 代〜40 代前半の女性が多いです。

 

— 日々のサロンワークで心がけていることは何ですか?

お店のコンセプトは「もっとカワイイ もっとキレイに もっとHappy」
女性の美意識に終わりはなく、常に「もっと!」を目指していると思います!
その「もっと!」をお手伝い出来るよう心がけています。
髪が変われば、洋服やメイクも変わって自信が持てたりしますから♪

遠藤真耶

ライター

遠藤真耶

美容業界誌を発行している出版社で、隔月誌と季刊誌2誌の編集長を経験。同社を約8年半勤めた後、2017年3月よりフリーランスの編集者兼ライターとして独立。独立後は“物語のある日々”を自身のテーマに据え活動中。

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