—隠された本能を呼び醒ます―薔薇と林檎は誘惑の香り―

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−嗅覚の受容体−　イラスト／桜雪

古い時代の物語……

イスラーム王朝の王の肖像
其の眼差しは聡明な光を湛え、
そして度々、其の手には薔薇の花が描かれる――

イスラームの世界では
白い薔薇は 預言者ムハンマド
赤い薔薇は 絶対神アラーの象徴とされた

ムハンマドの汗は薔薇の香りを持つと云われ、
歴代の王は敬愛の念を持って薔薇の香りを好んだと云う――

香りというものは冷たく云ってしまえば
単なる”化学物質”に過ぎない

けれど人間は、
各々の異なる受容体によって
其の化学物質の匂いを《感じる》のです

受容体が異なれば、反応も異なり
先天的要因だけに捉われるとするならば
其の受容体の《差》が
匂いの好みの《差》であると云えましょう

ジグソーパズルの凹凸の様に
ぴたり、と己の本能と《結合》する匂い
其の匂いは
生物としての根源的な欲求を喚び醒ますのです。
《興奮のシグナル》として。

かつて中世西欧世界では
女性は自らの脇に林檎を挟み、
自らの汗を、また、その身体の匂いを染み込ませ、
意中の男性にその林檎を渡したと云う

自らの匂いとは
最も隠すべき《秘密》であり、
其の《秘密》を渡すと云うことは、
最も大胆な求愛の形。

古来から、人間にとって
“匂い”とは求愛行動の《鍵》

その《鍵》を深く感じる心が、
ぴたり、と合い、吸い寄せられるならば
それこそが其の《鍵》の持ち主に惹かれる、ということでしょう

人間というあやふやな被り物の中に閉じ籠められた
生物としての止むに止まれぬ根源的な欲求――
其れを喚び醒ます《鍵》に出会った時――

あなたは何を《感じる》でしょうか

今夜もゆっくりおやすみくださいませ。
またお逢いできますことを……

最強の地下アイドル：仮面女子

桜雪

2010年に東大受験生アイドルとしてデビュー。東京大学入学後は心理学を専攻。仮面女子としての活動の他、バラエティ番組や報道番組に出演。

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