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儚き雪にみる日本の幽玄の美

―雪残る夜の徒然雑記。―

昨日はものすごい雪でしたね。
東京ではめずらしく、サクサクと音がするほど真っ白な雪が降り積もりました。

お仕事帰りのお出かけには向かない雪化粧の日。
おうちでゆっくり読書してみるのはいかがでしょう。

淑女のみなさま、こんばんは。

雪、だいぶ積もりましたが大丈夫でしたか?
雪がやんでも、アイスバーンなどもありますので引き続きお気をつけ下さいね。

実生活に関しては困った事態を招きうる積雪。

ですが、文学や絵画においては、万葉集の時代から三島・谷崎など近代文学に至るまで、季節の風物や物語の背景として美しく描かれてきました。

 

我が背子を今か今かと出で見れば淡雪降れり庭もほどろに(雑歌2323)

―大好きな想い人をいまかいまかと待ちながら外に出てみると
庭を薄く染めるように淡雪が降っている―

 

男が通ってくる通い婚文化だった昔。
契は交わしたものの、雪が降ったらあの人は果たして来るのか来ないのか……
雪の降り始めの情景とともに様々な女心が垣間見えます。

 

儚く散りゆく桜を愛でる日本人気質ですから、雪にも同じく、儚さや淡い夢のような魅力を感じ、そこに幽玄の美をみたのでしょう。

近代に入っても、多くの文学者にとって雪はやはり“美”そのものだったようです。

『細雪(谷崎潤一郎)』『春の雪(三島由紀夫)』『雪国(川端康成)』『雪渡り(宮沢賢治)』……

パッと思いつくタイトルだけ並べてみても、錚々たる作家の雪と名のつく作品がズラリ。

個人的には、タイトルにこそ“雪”がつかないものの、美しい雪景色を見るたびに思い出すのが三島由紀夫の『憂国』という短編小説

二・二六事件が起きた雪の朝を舞台に描かれた青年将校とその妻の物語です。
至誠への情熱、夫婦の愛、日本の夜明け前を感じさせる時代背景……

その全てが“美”そのものに感じられるような三島文体で綴られています。

    
⇡小説はこちらの中に収録。個人的には『憂国』が一番好き。(左)
ちなみに、映画もあります。(右)

 


ー映画『憂国』DVDパッケージよりー
⇡やはり、というか、さすがのATG映画。三島由紀夫が原作のみならず、
監督・制作・美術・脚本・主演の全てを
担当していて圧巻です。

 

静かな雪の夜……。

寒くて表には出たくないような天候ですが、おうちでぬくぬくしながら美しい文学作品/映像に触れてみるのも粋なもの

素敵な夜をお過ごしくださいませ。

打矢 麻理子

SEIReN編集長

打矢麻理子

様々なジャンルの女性ファッション誌や、ビジュアルブック、書籍制作などの経験を活かし、編集者として活動中。2017年に出版社の編集事業局取締役社長を経て独立。クリエイターチーム「Lilith Edit」、メディアプロジェクト「SEIReN」を主宰。

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