ものごとに感情を差しはさまないのは、本当は怖いことだ。
感情的になると、世界が平和になる理由。
「仕事に感情を差しはさむな」――
社会人であれば、誰でも一度くらいは言われたことがあるのではないでしょうか?
こうしたことを言う人って、ストイックで仕事に厳しくて、少し付き合いづらいイメージがありますよね。
堅物で少し柔軟性に欠け、例えば新規のプロジェクトなどには消極的であることも多いかもしれません。
一方で、新しい発想が得意で「クリエイティブ」なタイプの人は、あまりこういうことを言わないような気がします。
むしろ、「今日は気分が乗らないから帰りたい」なんてことを、職場でも平気で口にしたり。
ただ、こうした人物の方が人間としては付き合い易く、また仕事でも柔軟な思考で高いパフォーマンスを見せることもあります(そうでないことも多いですが……)。
音楽プロデューサーの中脇雅裕さんは、著書「あなたの仕事はなぜつまらないのか」(ワニブックス刊・9月28日発売)の中で、「感情的であることがクリエイティブには必要」、そして「感情を差しはさまないと最終的に戦争が起こる」ということを説いています。
クリエイティブな発想に必要な「感情のタグ付け」
音楽プロデューサーとして数々のヒットアーティストを手がけてきた中脇さんは、「クリエイティブ」と言われる発想について、本書の中で語っています。
一般に、知識をたくさん持った「頭のいい人」と、「クリエイティブな人」は別のものとして語られます。
中脇さんはその違いを、「知識や記憶に『感情』をタグづけしているかどうか」だと言います。
例えば作曲家が「悲しい曲を作って欲しい」という依頼を受けたとします。
しかし、一口に「悲しい曲」と言ったとしても、「悲しい」には様々な悲しさがあります。(中略)優れたクリエイターは、この「様々なタイプの悲しさ」を、たくさん引き出しに持っていることでそれを選び、依頼された内容にあった感情の表現をすることができます。
自分の好きな食べ物には、「好き」という感情が紐づいています。
大好きな恋人と一緒に食べたものなら、「楽しかった」、「素敵な時間だった」という、好ましい感情が紐づいているかもしれません。
資料作りひとつをとっても、ただ事務的に情報を書き連ねるのでなく、ストックされている「感情がタグ付けされた情報」を引っ張り出して、見た人をワクワクさせるような構成やレイアウトで資料を作る、などというスタンスは、とてもクリエイティブな仕事の仕方ではないでしょうか。
「あなたの仕事はなぜつまらないのか」(中脇雅裕著・ワニブックス刊)より
つまり、「この仕事をした結果、相手が喜ぶ/不快に思うかもしれない」という「感情」を、自分の記憶や経験から引き出して反映することこそが「クリエイティブ」な仕事であるということになります。
感情を差しはさまないことの怖さ
「仕事に感情を差しはさまない」というと、非常に意識が高くストイックなように見えますが、裏返すと「相手が喜ぼうが、不快に感じようが関係ない」という態度でもあります。
もちろん、仕事である以上、不快だからやらない、というのはどうかとも思いますが、仕事だから相手を不快にしていいというものでもありません。
また、こうした態度は先例主義や手続き論に陥りがちで、保守的で融通が利かなくなる傾向もあります。
「確かに今まで例のないことだが、お客様は喜んでくれるだろう」
「これをやれば社員のモチベーションが確実に上がる」
感情が紐づけされていれば、こうした判断が出来るようになるのです。
逆に、「感情を差しはさまない」ことを貫いて、相手の感情に鈍感になると、周囲の心は離れていってしまいます。
それどころか、相手の地雷を踏んで怒らせてしまうこともあります。
激怒している相手に向かって、仕事に感情を差しはさむな、というのはナンセンスでしょう。
ただ多くの知識を持っているだけでなく、たくさんの経験をして、たくさん感動している人は、たくさんの感情を記憶にタグ付けしています。
それによって、相手の気持ちを思いやることが出来るようになる――それがクリエイティブであることに繋がる、というわけです。
感情を無視すると戦争になる
職場や学校といった狭い範囲の人間関係でさえ、意図せず相手の気持ちを不快にさせてしまうことはあるものです。
もしこれが、文化の違う外国人とだったらどうでしょう?
日本では当たり前のことでも、海外ではタブーとされていること、またはその逆のことも世界にはたくさんあります。
相手の文化のことを理解せずに、自分の常識や過去の事例を押し付ける――歴史上、そうやって起こった戦争がたくさんありました。
「相手の身になって考える」とはよく言いますが、クリエイティブな仕事も、異文化との交流も、接する相手の背景を知らなくては喜ぶこと、不快なことがわかりません。
それも、ただ知識として知るだけでなく、そこに「感情」を紐づけることでそれは活きた情報となっていきます。
「そのためには、自分自身が欲望を持ち、それが達成される成功イメージを大きく持つことが重要」だと中脇さんは語ります。
具体的な成功イメージを持つことで、潜在意識がそのための情報を求めて大きく働くようになる、というのが、本書の大きな内容のひとつ。
そうして集めた情報は、自身の成功だけでなく、周囲の人への気遣い、引いては世界の平和にも繋がっていくことになる――
「あなたの仕事はなぜつまらないのか」は、成功イメージを持つための具体的な方法論から上記のような内容まで、脳科学などを元に「欲望」と「妄想力」をテーマとした実用本です。
より具体的な内容が多岐にわたり紹介されていますので、ぜひ手に取ってご覧ください。
あなたの仕事はなぜつまらないのか?
著:中脇雅裕
編:Lilith Edit(リリスエディット)
発売元:ワニブックス